第87章 夢でいいから
「あっ…ん」
むにゅっむにゅっ…
ぎこちない触り方だけど、翔にとっても初めてのことなんだと思うと何だか嬉しくなった。
「さと兄…俺のも…」
俺もそろそろっと翔のスエットに手を這わせ、中心の形をなぞるようにしてゆっくり揉んだ。
翔のスエットも濡れてきた感触がする。
「翔、直接触るよ」
「えっ、あっ…んっ」
ゴムの部分からスルスルッと手を入れると、上を向いている生暖かい先っぽに触れた。
「これが翔の…」
「んっ、はぁ」
翔の手も俺のモノに触れてきた。
「しょ、んっ」
お互いの中心を扱きながら、キスを繰り返す。
「んっ」
「はぁ」
足も絡ませて、俺も翔も動きが大胆になっていく。
夢中になっていると、
ガタン…
ローテーブルにぶつかってしまった。
だけど俺たちはそれほど気にも止めずに行為を続けていた。
「智〜?大きな音がしたけど大丈夫〜?」
暫くすると母ちゃんの声が近づいてきて、こっちに向かっているのがわかった。
幸い部屋の鍵は閉めていたけれど、俺の部屋の下が母ちゃんの部屋だったことをすっかり忘れていたんだ。
「あ〜、大丈夫だよ。テーブルに足をぶつけただけだから」
翔の体から一旦離れ、ドア越しから声をかけた。
「ケガはしてない?大丈夫?」
「うん、大丈夫。心配かけてごめんね」
「それならいいけど…。夜更かしもほどほどにするのよ」
「うん、ごめんね」
「おやすみ、智」
「おやすみ、母ちゃん」
母ちゃんの足音が遠のいていくのを確認し、翔と顔を合わせてお互いに肩を竦めた。
考えてみたら、俺のベッドも翔のベッドもスプリングがきいているから、そっちに移動したとしても軋む音がたってしまう。
それにまた音がしたからと、女手1つで育ててくれた母ちゃんに心配をかけさせたくない。
「夢の時間ももう終わり…かな」
「うん。そう…だね」
俺はラグの上に座り、唇を噛みしめている翔を手招きした。