第87章 夢でいいから
「おいで」
両手を広げると、最初の時みたいに翔が俺の足に跨がる。
俺は泣きそうな表情をしている翔を、優しく抱きしめた。
お互いの中心はズボンから出したままになっている。
「これ…どうしよっか…」
俺が視線を下に向けると、翔がクスッとした。
「抜かないとキツイよな、翔」
「うん、さと兄のも…ね」
再びお互いのモノを握り、ゆっくり扱きはじめた。
翔は唇を噛んで声をださないようにしている。
「大切な唇が切れるから…」
俺はもう片方の手を翔の下顎に添えた。
「翔、キスしよ」
「さと兄…いっぱいキスして」
再び唇を重ね、貪りあうような熱いキスを交わした。
後頭部を固定し、お互いのモノを扱いていた手もいつの間にか背中に回っていた。
愛しくてたまらない。
時々、少し上から見ている翔と目が合う。
「好きだよ、翔」
「俺もさと兄が好き」
そう囁きあう。
間もなくして、ブルブルっと身震いがした。
どうやら翔とのキスだけでイッてしまったようだ。
それは翔も同じだったみたいで。
お互いに長い息をはき、体をぎゅうっと抱きしめあった。
んっ、眩しい…。
カーテンの隙間からの朝の光が、気持ちをリセットさせてくれる。
翔は…あ、部屋に戻ったんだっけ。
「さと兄、おはよう」
「ん。翔、おはよ」
部屋のドアを開けると、翔も出てきたところだった。
照れ隠しで翔の頭をポンポンする。
階段を降りるとキッチンにいる母ちゃんの姿が見えた。
「母ちゃん、おはよう」
「母さん、おはよう」
「あら、おはよう。ふふっ。2人とも寝癖がすごいわね〜」
お互いの髪を見ると、たしかに…。
3人で朝から笑いあい、いつまでもこの雰囲気に浸っていたいなって思った。
洗面台に翔と並ぶ。
「あ、これ。翔にやるよ」
俺はズボンのポケットからコロンを取り出し、翔に渡した。
「えっ。これ、いつも俺が使ってたやつ…。ありがとう、さと兄」
「あぁ、使って」
「じゃあ、早速今日から使うね」
だってさ…いつまでも翔が他の男が選んだ匂いをさせてるのはイヤだし。
「あ〜久しぶり、この匂い。やっぱりいいなぁ〜」
嬉しそうにしている翔から、いつもの匂いがしてくる。
俺の、翔。
俺は鼻腔からその匂いを…翔を…めいっぱい取り込んだ。
END