第87章 夢でいいから
初めて触れた翔の唇は想像以上に柔らかかった。
二度と触れることはないかもしれない。
そう思ったら、ちょっぴりだけど目尻が涙で濡れていった。
「もう…泣かないで」
「泣いてなんか…」
翔の唇が俺の唇から目尻に移っていく。
優しくあてられる唇。
「さと兄、可愛い」
「ん…」
いつもなら照れ隠しで“うるせぇ”って返していたかもしれないが、甘く囁くような翔の声に胸が込み上げてきてしまった。
再び重なる唇。
「さと兄、綺麗…」
そう言いながら翔の手が俺の後頭部にまわり、俺の唇を甘噛みした。
「ん…ふぅ」
つい声が出てしまう。
綺麗なんて言われても自分ではよくわからないけど、今は翔の言葉の1つ1つが俺を気持ちよくさせていく。
そんな俺の反応も、翔は嬉しそうにしていて。
翔とのこの瞬間を大切にしたいと思った。
甘噛みから濃厚なキスに変わっていき、交わる舌は吸い付くようにねっとりと絡まっていく。
「んっ…」
「はぁ…」
翔の中心も俺と同じようにスエットを押し上げていて。
気づけばお互い中心を擦り合わせるように、自然と腰を振っていた。
布越しにあたる翔の中心に興奮し、下着が濡れていく感触がする。
「しょ、触って」
その言葉を言い終わる頃には、翔の手がスエットの上から俺の中心に触れていた。