第87章 夢でいいから

「ちょ、翔？」

こんなの、まるで恋人同士みたいじゃねぇか。

「翔、重たい」

「大丈夫」

「返事になってねぇし」

まぁ…いっか。

ここは開き直ってみようかな。

俺も翔をぎゅうっと抱きしめた。

「さと兄…あったかいね」

「うん、あったかい」

俺よりも筋肉がついていてガッチリしている翔の体。

「お前、やっぱり重いよ」

「それは…愛情の重さだよ」

「ん？何？」

「ううん、何でもない」

翔が更に手の力を強めてひっつく。



「俺…お前の片思いの人の代わりになんてなれねぇよ？」

「代わりになんかしてないし、代わりなんかいらない」

…えっ？

胸がドックンドックンと騒ぐ。

「俺の片思いの相手は…さと兄だから」

「しょ、う…」

「これ以上は望まないから…」

翔が顔をあげて俺を見つめる。

「もっとぎゅうってしてほしい」

「翔…」

「お願い、さと兄。これくらい、夢見たっていいでしょ」

「あぁ、いいよ。一緒に夢見ような」

コツン…

翔のまぁるいおでこと俺のおでこをくっつけた。