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キミとボク【気象系BL】

第87章 夢でいいから



暫く沈黙の時間が流れた後、摘まんでいる俺の袖口を翔がクイクイッと引っ張った。

「どうした?」

「もうちょっとだけ、さと兄の近くに行ってもいいかな」

無自覚なのかわからないけど、首を傾げながらの上目遣い。

「翔。お前、ずりぃな…」

「ずるいって?」

ほらまた。

「何だよ、目まで潤ませやがって。ダメなんて言えねぇじゃんか」

「そんなこと言われても…」

困ったような口調をしながらも、翔が少しずつ俺のほうに寄ってくる。

「さと兄」

「ん?」

「俺もね、苦しいんだぁ」

そう呟くと、翔の頭がコテンと俺の肩に凭れてきた。

ふわっとシャンプーの香りが鼻をくすぐり、俺は翔の髪に顔を埋めた。

「んふふ。さと兄、くすぐったい」

「そう?嬉しそうに聞こえるよ」

「うん。嬉しいもん」

「ばーか」

愛しくて、切なくなる。

「さと兄はさ、恋…してる?」

「あぁ。まぁ、ね」

「さと兄も苦しい?」

「そうだな…苦しいだけじゃないけど…苦しいかもな」

「そっか。同じだね」

胸がじんわりとしてくる。

抱きしめたい。

思わず手を伸ばしそうになったけど、気持ちを押さえた。

だけど。

「ねぇ、さと兄」

「ん?」

「ちょっとだけでいいからさ、ぎゅうってしてもいい?」

「ぎゅう?」

「うん」

「んもぅ。しょうがねぇなぁ」

「やった」

遠慮がちに翔の腕が、俺の胸と背中にまわってくる。

てっきり横から抱きつくだけだと思ってた。

なのに。

あぐらをかいている俺の足が、翔の重みでズシリ…としたんだ。






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