第86章 俺のチョコレート
結局俺も帰り支度をして美術室をあとにした。
昇降口を出ると、トボトボと歩く櫻井の後ろ姿が見えた。
おっ、一緒に帰るチャンス。
俺は早歩きをして櫻井に近づいていった。
「あ、チョコのお兄ちゃんだ」
そう言って櫻井の元に走ってくる、小学生くらいの女の子3人組。
俺は会話が聞こえる距離を保ち、様子を見ることにした。
「お兄ちゃん、朝はありがとう」
「どうだった?」
「うん、もらってくれたの〜」
「良かったね」
「お兄ちゃんのおかげ〜」
お兄ちゃんのおかげ…?
会話の内容が気になる。
「おーい、櫻井」
俺は偶然を装って櫻井の元に向かった。
「櫻井、この子たちからチョコレートもらったの?」
「いや、そうじゃなくて…」
「あのね、朝ね、転んじゃったのね。そしたらチョコの箱が潰れて包装紙も破れちゃってね」
「そしたらね、このお兄ちゃんがね、同じもの持ってるからってね、交換してくれたの」
「へぇ…」
いいとこあるじゃん。