第85章 のぼせ注意報
リビングに着くと櫻井はソファーの横にバッグとコートを置き、スーツの上衣を脱ぎはじめた。
さっきもみんなYシャツ姿でいたし、職場では見慣れてるけど…
俺の家で二人っきりの状況のなか‘’脱いでる櫻井”ってのが、何ともそそるというか。
白いYシャツに細い腰、スラッと長い足の櫻井の後ろ姿。
“大野くん…どこまで脱いだらいいかな…”
なんて言われたりしたらどうしよう〜っ。
頭が妄想でいっぱいになりそうだよ。
「大野くん…」
「は、はいっ」
「片付けしちゃおうよ」
声のする方に振り向くと、櫻井はすでにテーブルのほうへ移動していた。
そうだよな、現実はそんなに甘くはないかぁ。
「缶はこっちで〜、プラスチックはこっちね」
「うん、わかった。ありがとう」
分別しながら櫻井が袋に入れていく。
なに、この恋人のような?夫婦のような?シチュエーション。
少し酔っているとはいえ、顔がポーッと火照ってくるのがわかる。
「大野くん、大丈夫?」
そんな俺を心配した櫻井が、俺の顔を覗きこんだ。
バクバクバクバク…
いや、そんなに見つめられたら…ヤバイって。
「大野くんはソファーで休んでて。大体の置場所はわかったから、残りは俺がやるね」
櫻井に背中を押されながらソファーに座った俺。
少し先にはせっせと片付けをする櫻井。
“この後はどうする?お風呂にする?それとも…”
なんてモジモジしながら言われたらどうしよう〜っ。
俺はクッションをギュウッと抱きしめて顔を埋めた。