第84章 大好きのキス
「ん〜っ」
「ふわぁ〜っ。しょおちゃんおはよ」
「智、おはよう。…えっ」
身体を起こそうとしたのを智に止められた。
「智?」
「もう少しこのまま…ねっ」
智が俺を抱きしめた。
暖かくって、また眠ってしまいそうになってくる。
「しょおちゃん」
「…ん?」
「しょ〜お…」
「あはは。なに、どうした?」
「あの、さ…」
「うん」
「俺もさ“翔”って呼びたい」
「えっ?」
「イヤ?イヤなら…」
「ううん、いいよ。翔って呼んで」
「んふふ。ありがと」
はぁ…って深呼吸した後、智が俺の前髪をかきあげた。
「やっぱりイケメン」
「あ、ありがと」
「でも…」
智が口角をあげてニヤッと笑う。
「えっ、あっ」
何だかわからないうちに…俺は智に組敷かれてしまった。
「な、えっ、あの…智?」
「んふふ。やっぱり翔はさ、かっこよくて可愛いなって」
目を細めている智は綺麗さに加えて男性の色気が溢れていて…
可愛かった智の初めて見せる妖艶な表情にドキドキした。
「翔は、大きな目も赤い唇もあの頃のまま…」
智の顔がゆっくり近づき、俺の頬にキスを1つ落とす。
「翔、大好き」
「智…」
「大好きのキス、してもいい?」
「大好きのキス…?」
「うん、そう。大好きのキス」
「それならさっきも…」
「んふふ。ほっぺたへのは、大好きのちゅっでしょ」
「そうだけど…」
「そろそろさ、大好きのキス…」
智の唇が俺の唇に触れそうになる。
「してもいいよね、翔…」
「さと、んっ…」
“智”と呼ぶ前に唇が塞がれた。