第84章 大好きのキス
重なっているだけの唇。
17年ぶりに触れた、智の唇。
あの時は不意にだったし、唇に何が触れたのか後で知ったけど…今は智とキスしてるって認識してるだけに、妙に恥ずかしい。
智の唇がゆっくりと離れていく。
「目は覚めましたか?翔姫」
「…目覚めるにはまだ足りないです…智王子」
「どうしたらいい?」
「もっと…して」
俺の顔の横で指を絡ませ、俺たちは再び唇を重ねた。
今度はお互いの唇を味わうように、何度も角度を変えて。
「さと、し…」
「翔…」
見つめ合い微笑む。
幸せだなって浸っていると、
「あっ、んっ…」
智の唇が俺の首筋を捉えた。
「翔。大好きのキスは唇だけじゃないから…」
「…わかってる…んっふぅ」
智。
好きで好きでたまらないよ。
『しょちゃんはおひめしゃまねー、しゃとはおうじしゃまよー』
『だいしゅきのちゅっしたのー』
『大好きのキス…してもいいよね』
そうか…
あの頃から智は男前だったんだな。
翔24歳・智20歳。
俺の恋人、智。
大好きのキスを全身に散りばめて。
新たなページを紡いでいく。
「翔、ココ…おっきしてるよ」
「智だって、ソコ…おっきしてるから…」
END