第82章 Dear Snow
「ふふっ。智くん?」
「んふふ。翔くんはやっぱり翔くんだなぁって思ってたとこ」
「あはは。ありがとうって言えばいいのかな」
照れたようにしながら、窓の外を見る翔くん。
「雪…?」
「うん。俺がここに着いた時に降り始めたんだよ」
「そうなんだぁ。緊張しちゃって全然気づかなかった…。智くんとは初めて見るね、雪」
「そういえばそうかも…」
そう言いながら、二人とも暫く雪を眺めていた。
視線をふと翔くんに向けると、翔くんも俺のほうを見ていてドキッとした。
「えっと…あの、さ。翔くんこの後予定は…」
「あ、うん。特にはないけど…どうして?」
「今日さ、翔くん誕生日だったよね」
「えっ、智くん覚えてくれてたの?嬉しいな」
頬を赤らめる翔くんに胸がキュンとした。
「あの…翔くん、もし良ければ…」
俺は櫻井くんがくれたこのチャンスを逃したくないと思った。
「ウチさ、ここから近いんだけど…ケーキでも買ってさ、お誕生日のお祝いと再会のお祝いでも…なんて、ね」
「いい、の?」
「えっ、あ、うん。翔くんがよければ…。もっと話もしたいし…」
「じゃあ、お邪魔しようかな」
俺と翔くんは店を出た。
雪が降ってることに、はしゃぐ子供たちの声…足元に気を付けながら歩く人々…寄り添って歩くカップル…。
俺と翔くんが隣を歩くのは10年振りで。
ちょっとくらいいいかな…なんて、時々腕が触れる距離で歩いた。
「智くん、そのマフラーって高校の時の…」
「うん、そう。不思議とね、今日はこれを巻きたくなったんだ。翔くんも覚えてくれてたんだね」
「うん。智くんによく似合ってたから…」
「翔くん…」
「あ、ねぇ、智くん。ケーキ屋さんってどこにあるの?」
「んふふ。こっち」
櫻井くん…本当にありがとう。