第82章 Dear Snow
今日1月25日は、翔くんの誕生日。
「会いたいよ…翔くん…」
天気予報では、雪がちらつくかもしれないとテレビから流れている。
「どうりで寒いわけだな」
温かいものでも飲もうかとキッチンへ向かう途中、スマホに着信があった。
「櫻井くん?どうしたの?」
『すみません。あの…大野先生は、これから何か予定は入ってますか?』
「いや、何もないけど」
『あの…先生の家の近くの喫茶店まで来てもらうことはできますか?』
「それはかまわないけど…どうした?何かあった?」
『ちょっとお届けしたいものがあって…』
「うん、わかった。いいよ」
『ありがとうございます。寒いのに、ごめんなさい』
櫻井くんと時間のやり取りをして、支度を始めた。
いつものキャメル色のダッフルコート。
そして…今日はなぜか高校生の頃にしていた淡いブルーのマフラーを巻きたくなった。
喫茶店までは5〜6分。
櫻井くんは学校帰りにそのまま来たのか、既にお店の前にいた。
「櫻井くん、お待たせ」
「こんにちは。今日はありがとうございます。あ…雪が降ってきましたね」
櫻井くんに言われて空を見上げると、雪がチラチラと降り始めてきていた。
「“櫻井”で予約してあるので、中に入っててください」
雪に見いっていた俺は、そう言われて我にかえった。
櫻井くんはなぜか俺と店から離れていく。
「大野先生〜、お届けものは席にありますから〜」
えっ、何?どうした?
店の中に入り店員さんに伝えると、席に案内された。
「なん、で…?」
もう頭の中がパニックで、何が何だかわからない。