第82章 Dear Snow
できるだけ意識しないように。
そう思えば思うほど逆効果だった。
俺は意識しないようにするほうが無理なんだと、そう思うことにした。
翔くんは同い年の中でも大人びたところがあった。
落ち着いてるというか。
そんなところに惹かれたんだ。
櫻井くんは…子供っぽいわけではないけど、何だか可愛らしい。
よく喋って、よく笑って。元気いっぱいな感じ。
若さが眩しい。
「おっ。この前まで苦戦してたところが今日はできてるよ」
「本当ですか?嬉しいなぁ」
「じゃあ、ちょっと休憩しようか」
「はーい」
櫻井くんは「うーん」と唸りながら伸びをし、俺を見た。
「ねぇ、大野先生」
「ん?」
「先生ってさ、恋人とか好きな人っているの?」
「えっ…?」
「あ、母さんが気になってるみたいで…。俺、ココア飲みたくなったなぁ。先生も飲みます?」
「あ、うん」
「じゃあ作ってきますね」
櫻井くんは少し慌てたようにしてキッチンに向かった。
「もう。先生にあんなこと聞いて…」
「だってぇ…」
そんな会話が、キッチンのほうから微かに聞こえた。
なんだよ…。
ドキドキしたよ…。