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キミとボク【気象系BL】

第80章 キミがいるから


Oサイド


お弁当の陳列をしていた櫻井くんが手を止めて、すぐ横にあるおにぎりの棚に体を伸ばした。

「ツナマヨ…ありますね」

そう言って1つ手に取り、俺のほうを向いた。

両手を揃えた掌に乗せられているツナマヨのおにぎり。

聞こえるように呟いてはみたけど、まさか取ってくれるなんて…。

嬉しすぎる。

感動に浸っていると、櫻井くんは俺が黙っているのを怒っているのだと思ってしまったのだろう。

「あ、ごめんなさい。声がしたものだからつい…失礼しました」

顔を真っ赤にしてアタフタし始めてしまった。

それが何とも可愛いらしい。

櫻井くんがツナマヨを棚に戻そうとしたから

「あ、あの。取ってくれてありがとうございます。ソレ、ください」

俺はそう声をかけた。

「は、はい…どうぞ」

再び俺の前に差し出されたツナマヨのおにぎり。

俺はおにぎりを受け取ろうと手を伸ばした。



「あ、あの…手…」

戸惑うような櫻井くんの声で我にかえった。

気づけば、おにぎりを受け取ろうとした俺の手が櫻井くんの手ごと掴んでいた。

「あ、ご、ごめん」

「いえ、大丈夫です…」

だけど俺は櫻井くんの手を離しがたかった。

『櫻井くん〜こっちお願い〜』

他の店員さんの声が聞こえてきた。

「は、はーい」

櫻井くんが返事をする。

そうだ、相手は仕事中だ。

これ以上引き留めておくにはいかない。

名残惜しく感じながら、俺は櫻井くんの手を離した。

「明日も来ますね…櫻井くん」

「えっ。あ、はい。待ってます」

名前で呼ばれてびっくりした表情をしながらも爽やかに微笑み、その場を離れる櫻井くん。

俺は手に残る櫻井くんの温もりとカゴの中にあるツナマヨのおにぎりに幸せを感じていた。




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