第80章 キミがいるから
Sサイド
今年の春、自宅近くにコンビニができた。
当初は、買い物に便利だなって思ってただけだった。
音楽を聴いたり映画鑑賞やカメラが趣味な俺は資金を集めたくて、この夏からそのコンビニでバイトを始めることにした。
昼間は大学に行ってるから、夕方から夜のシフトに入っている。
ふと時計を見ると20時を少し回っていた。
この時間になると、ソワソワドキドキしてくる。
今日も来てくれるかな…なんて。
いつもだいたいこの時間に来店されるその人は、優しそうな瞳とスーっと通った鼻筋が印象的な人。
スーツにビジネスバッグの社会人さん。
冬前にバイトは辞めるつもりでいたんだけど、その人の姿を見たくて…もう少し続けてみることにした。
ガラス張りの店内からチラッと外を見ると、あの人の姿が見えた。
ドキドキドキドキと胸が高鳴る。
お弁当コーナーの陳列を始めると
♪♪♪
出入り口の音が鳴った。
いつもの、あの人の靴の音がする。
来た…
そうは思ってもジロジロ見るわけにもいかず、仕事に集中する。
靴の音が、俺がいるお弁当コーナー辺りで止まった。
心臓がバクバクして飛び出しそうな俺の近くで
「ツナマヨ残ってるかなぁ…」
あなたがそう呟いたのが聞こえた。