第78章 夢の続き
熱を放った俺は脱力したまま4回目のボタンを押し、音を流した。
その間に俺は、トイレットペーパーで手と白濁が付いてしまった壁を拭いた。
「櫻井さん、大丈夫ですか?」
ドアの向こうから声がする。
俺は気だるさもあって、声の主には気づかないでいた。
「はぁ…もうでます、から…」
急いで下着とズボンを上げ、ゆっくりとドアを開けた。
「お待たせしてすみません…」
そう言いながら目の前にいる人の顔を見た。
あっ…。
「大野…」
「中々戻って来ないから、みんな心配してたんです」
大野の顔をまともに見ることはできなかったけど、いつもの柔らかい表情だった気がする。
「あ、ありがとう。手、洗う…」
俺は大野の視線を感じつつ、まだベタついている手を洗った。
「大丈夫ですか?」
大野が俺の横にピタッとくっつく。
ただそれだけなのに、再び中心に熱が集まっていくのを感じた。
「大丈夫だから…」
俺は言葉を発するのがやっとだった。
「櫻井さん、息が上がってますよ。それに…」
「それ、に?」
「すごく火照ってる」
自分でもわかってる…かなり高揚してること。
「よ、酔ってるから…かな」
何とか誤魔化したくて出た、苦し紛れの言葉。
だけど大野には通用しなかった。
「酔ってるだけじゃないですよね…早く帰ったほうがいいかも」
「えっ」
「不完全燃焼…ですよね?」
大野は耳元で囁き、俺の頬にキスを1つ落とした。
「あっ…ん」
聞きたかった大野の低い声と不意打ちのキス。
快感でゾクゾクした俺は膝の力が抜けて、ペタッとその場に座り込んでしまった。
様子を見にきたという課長に、俺の体調が悪そうだから送っていく…と大野が話をしている。
最早、俺も忘年会の場に戻る気力はなくて…
二人の会話をじっと聞いていた。