第78章 夢の続き
俺は大野と課長に支えられながら店の外に出た。
間もなくしてタクシーが到着した。
「1人で帰れますから…」
そう言ってはみたものの…
「大野。櫻井をよろしく」
「はい、任せてください」
課長と大野のやり取りに、何も言えなくなってしまった。
「櫻井さん」
「な、に…?」
「送って行くって言いましたけど、ウチのほうがここから近いんで…いいですよね?」
「えっ…」
俺が戸惑っているのをよそに、大野は運転手に行き先を告げていた。
景色を見ても、どこなのかわからない。
2〜3分経っただろうか。
「着きましたよ」
大野の声にハッとした。
「大丈夫です、そんなに怯えないでください…ウチで体を休めればいいんです」
「あ、うん…」
タクシーを降り、俺は手を引かれながら大野の家に向かった。
「今、水を持ってきます」
俺をソファーに座らせ、大野がその場を離れた。
何気なく部屋全体を見回してみる。
大野の部屋は物が少なくスッキリしていた。
「櫻井さん、水どうぞ」
「あ、ありがとう」
そう言ってコップを受け取ろうとしたけど…
その水を大野が口に含み、顔が近づいてくる。
「あっ…んんっ」
俺の後頭部と顎に大野の手が添えられ、すかさず唇を奪われた。
生温い感触。
こぼれた水が下顎を伝っていく。
「んっはぁ…なにす…んんっ」
再び大野の口を通して俺の口内に水が送りこまれる。
ゴクッ…
それを飲み込む音がすると、唇を離した大野が満足げに俺を見ていた。
「口移しは初めてでしたか?」
「は、初めても何も急にされたら…」
俺は軽く握った右手の甲で唇を拭った。
「櫻井さん…」
大野が俺を押し倒すようにしてソファーに上がってくる。
心臓はバクバクし、背中はゾクゾクが止まらない。
「櫻井さんは…思っていた以上に可愛い人ですね」
大野はあの妖艶な表情をしながら俺の頬を両手で包み、今度はゆっくりと唇を重ねてきたんだ。