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キミとボク【気象系BL】

第77章 耳をすませば



櫻井が昼休みの終わりに俺を探す理由。

“一緒に卒業したいから”

以前そう言っていた。

俺、朝は遅刻したことないし、午後の授業にだって遅れたことないし。

勉強は中くらいだけど、赤点はとってないし。

制服もネクタイは若干緩めにしてるけど、櫻井以外に注意されたことはない。

だから俺のことは心配しなくてもいいのにって思うんだけど。

でも…。

「大野くん、またネクタイ緩いよ」

櫻井が俺のネクタイに手をかける。

この距離感、結構近くてドキドキするんだよな。

「え〜っ、これくらいいいじゃん」

「ダメだよ。大野くんはちゃんと締めてるほうがカッコいいんだか…あっ…」

櫻井が俺のネクタイを結び直そうとしていた手を止めた。

「ち、違うからねっ!カッコいいっていうのは、形よく締められたネクタイのことっ!」

「俺、何も言ってないけど」

「はっ。そ、そうだけど…大野くん、自分のことだと思ったかなって」

「お前…顔も耳も真っ赤」

「えっ」

櫻井は手でペタペタ自分の顔を触って確認し始めた。

「暖房が効いてるのかな。顔洗って、冷やしてくるっ」

櫻井は教室のドアに向かって歩き出した。

「おーい、ネクタイ途中だけど」

「後は自分でやって。戻ってきたらチェックするから」

俺はスタスタと教室を出ていく櫻井の後ろ姿を見ていた。

「んふふ。可愛いな」

櫻井が俺を気にかけてくれてることは、悪い気はしない。

むしろ…

気にかけるのは俺のことだけでいいんだ。





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