第12章 step & go
櫻井くん。
櫻井翔くん。
金髪で左耳にピアス、ワイシャツの胸元を少し開けててネクタイは緩めに結んでる。
一見怖そうだけど…まぁクールではあるけど笑顔が爽やかで頭もめちゃめちゃよくて。
端正な顔立ちのせいか、そんな格好をしていても良く似合っていて。
男の俺から見ても、すごく綺麗なんだ。
同じクラスなのに、あまり話したことはない。
席も離れてるし、つるんでる奴らも違うし。
しっかりしてて淡々としてるイメージがあったけど、意外と穏やかな話し方するんだなぁ。
思っていたより話しやすいし…ちょっとびっくりした。
2時間半くらい過ぎた頃…櫻井くんが再びやってきた。
「塾、終わったの?」
「うん、そう。」
そしてショーケースを見ながら「あった、良かった」なんて呟いてる。
「どれか買う?」
「えっと…大野くんがさっき言ってたチョコ2箱お願いしていい?」
「お客様、こちらお2箱でよろしいですか?」
「ははっ。サマになってるじゃん。」
「お陰様で。」
男の子なのに買うの?って気になったけど聞かないでおいた。
今は自分へのご褒美チョコとか友チョコとかあるしね。
「大野くんはさ…あとどれくらいで終わるの?」
「30分くらいかな。」
「その後って…何か予定ってある?」
「いや、ないけど…。」
「じゃあさ、終わったら連絡してくれるかな…これ…俺のアドレスだから。」
「あ、うん…。」
「無理にじゃなくていいから…気が向いたらでいいからさ。」
「わかった。」
小さく折りたたんだメモを俺に渡して、櫻井くんは走り去っていった。
アドレス…思わず受け取っちゃったよ…。
それにしてもあの走り方、ちょっと面白いかも。
30分後…
バイトを終えた俺は、さっき受け取ったメモを開き、櫻井くんにメールを送信した。