第12章 step & go
櫻井くんとは、3件隣のコーヒーショップで会うことになった。
「連絡くれてありがとう。疲れてるのにごめんね。」
「ううん、大丈夫。一息つきたかったから。」
お互いコーヒーを啜った。
タイミングが同じだったから、顔を見合わせてふふっと笑いあった。
「今までさ、あまり話したことなかったよね。」
俺の言葉に櫻井くんが小さく頷く。
「うん…共通の友達もいないしね。」
「櫻井くんってさ、意外と話しやすくてびっくりしたよ。」
「う、嬉しいな。そんな風に言ってもらえて。」
あ…、櫻井くんがはにかんでるの、初めて見たかも。
「今日はさ、櫻井くんはチョコいっぱい貰ったんじゃない?」
「貰ったことは貰ったけど…。好きな人からは貰えないから…。」
何でそんなに切なそうな顔をするんだろう。
「どうして?」
俺の言葉に櫻井くんの大きな瞳が揺らぐ。
「大野くんはさ…同性を好きになったことってある?」
「それって、男をってこと?」
「うん、そう。」
「そうだなぁ。憧れてとか、いい奴だなとか…そういうのならあるよ。」
「…恋愛感情で好きになったことは…?」
「恋愛感情ねぇ…。うーん…それはないかも。」
「……。」
櫻井くんはぷっくりした唇に指の腹をあてて、眉間にシワを寄せてる。
「どうした?」
「じゃあ、例えばなんだけどね。」
「うん。」
「もし男からね、その…大野くんのことを、ね、恋愛感情で…好きって言われたら、どう思う?」
「へっ…?」
「あ、ごめん、ごめん。今の忘れて。」
ごめんねって言いながらコーヒーカップを親指で撫でている櫻井くん。
そんな姿を見ていたら…ちゃんと答えてあげないといけないんじゃないかっていう気持ちになったんだ。