第74章 バスストップ
「…もういいや」
そう呟いた俺に、キョトンとするあなた。
「もう降参します」
「こうさん…?んっ?」
首をかしげるあなたを愛しく思う。
「降参、素直になりますってこと」
「すなお、になる…」
「あなたが…智くんがさっき言ってた」
「あぁっ!あ、あぁ、あぁ、あぁ…」
「あ、しか言ってないし…ふふっ」
俺の手はいつの間にか、あなたの背中に回っていた。
それに気づいたあなたが、ふにゃんと柔らかく微笑む。
心も体もスーッと浄化されてくような…不思議な感覚がする。
体の中をめぐる熱は燃えているのに、なぜか冷静でいられた。
「智くん」
「ん…?」
「一度動き始めたら、止められないかもしれないよ?」
「大丈夫。ちゃんと誘導してあげるから」
「暴走しないようにしてくれるの?」
「大丈夫。ちゃんと受け止めてあげるから」
「ありがと…」
俺は智くんを引き寄せて、初めて自分から智くんにキスをした。
こんなに柔らかくて暖かかったんだね。
「しょぉくんにさ“お兄ちゃん”って言われると、俺もしょぉくんを“弟”としてみなきゃいけないって思わされる気がしてさ」
「それで“お兄ちゃん”って言われたくなかったの?」
「うん」
「もう言わないから…」
「ありがと」
優しくてかっこよくて可愛くて。
大好きな、大好きな智くん。
思いが強くなっていって
“智くんは兄だから”
そう自分に言い聞かせることで、気持ちにブレーキをかけてたんだ。
「しょぉくん、大好き」
「俺も智くんが大好き」
やっと言えた。