第72章 実りの秋
「智くん、目が潤んでない?」
俺は胸がいっぱいで本当に泣きそうになっていた。
「ご主人様が戻ってきたから嬉しくって」
そう言って、目尻の涙を拭った。
「あはは、ご主人様って…」
俺たちはおちゃらけながら再び歩き始めた。
大浴場には幾つかスリッパがあった。
本音をいうと、翔くんの素敵な裸を多くの人には見せたくない。
浴室に入ると、俺たちの他に俺たちと同い年くらいの3人組がいた。
その人たちはキャッキャキャッキャはしゃいでいて、微笑ましい。
「…智くん…あの中に気になる人でもいるの…?」
翔くんが不安そうな表情で聞いてきた。
「何言ってるんだよ、翔くん意外の人なんて目に入らないから」
俺の言葉を聞いた後、頬を赤らめて恥ずかしそうに俯く翔くんに抱きつきかけたけど、手で制された。
「見、見られちゃうでしょ」
「大丈夫だよ。俺たちもはしゃいでるように見えるだけなんじゃない?」
何だかわからないけど…あの3人組には俺たちの関係は受け入れてもらえそうな気がした。
「翔くん、背中洗ってあげる」
「あ、ありがと」
目の前にある翔くんの白くて広い背中を、手でそっと撫でた。
「んっ…」
「翔くん、色っぽい」
「だって急に撫でるから…ちゃんと洗ってよ」
「んふふ。わかった」
俺は手に石鹸を泡立た。
「えっ…手で?」
「うん。そのほうが気持ちいいでしょ、お互いに」
「もう、好きにして」
石鹸のついた手で翔くんの背中を撫でながら、石鹸がついていないところにちゅっと口づけた。
翔くんの背中がビクッとしたけど、拒否されることはなかった。
綺麗な肌だな…。
「気持ちいい?」
「う、ん…」
翔くんの声が色っぽく、手から感じる翔くんの身体のラインにも、俺はウズウズし始めた。
「…智くん、何か…あたってない…?」
「んふ、気づいちゃった?」
「…勃ってるの?」
翔くんが小声で聞いてきた。
「腰にタオル巻いてるから、周りからは見えないと思うよ」
俺は翔くんの背中に中心を密着させたんだ。