第72章 実りの秋
翌週末に向かった先は翔くんが言っていたとおり、紅葉や黄葉が広がる素敵な場所だった。
「すごく綺麗だね」
「うん、色が鮮やかだよね」
「スケッチブック持って来なかったの?」
「うん。だってさ、デッサンし始めたら止まらなくなりそうじゃん。景色は目に焼き付けておくから大丈夫」
俺は翔くんを引き寄せて抱きしめた。
「1泊2日だからさ。翔くんとくっついてたいし」
「もう…ありがと」
俺の肩に額を擦り付ける翔くん。
俺はその翔くんの顎に手をかけた。
ここはもうキスする流れでしょって思うのに、ビクッとする翔くんの反応が可愛くてたまらない。
「好きだよ」
俺は翔くんの赤くぷっくりした唇に、自分の唇を重ねた。
「んっ…」
翔くんの甘い吐息が、俺を煽る。
シャツの裾から手を中に入れると、翔くんが反射的に後退りした。
俺は翔くんの背中をがっちりホールドして、服の中に滑り込ませた手を胸までもっていき、小さな飾りに触れた。
「あ、ん…」
声が出てしまったからか、翔くんは焦ったように手で口を塞ぐ。
「外には聞こえてないから大丈夫だよ」
俺は翔くんの胸の飾りをこねくりまわした。
「んっ…ん…」
翔くんの柔らかい唇と可愛い飾りを堪能していると
プルルルル…
部屋の電話が鳴った。
「…翔くん出てよ」
「んっ、はぁ…もうっ…意地悪…」
一旦身体を離すと、翔くんが乱れたシャツと髪をササッと直す。
「電話だから相手には見えないよ?」
「あ、そっか。何だかポーッとしちゃって」
無自覚なんだろうけど…それって、気持ちよくなってましたって言ってるようなものでしょ。
「はい、お待たせしました。あ、はい…先でかまいません」
電話で話す翔くんの声に艶がある。
俺は翔くんの背中に抱きつき、受話器をあててないほうの耳にフーッと息をかけた。
「はい、あっん…あ、いえ…何でもありません…はい、よろしくお願いします」
受話器を置いた翔くんが振り返る。
「智くんのバカッ…」
顔を真っ赤にし、おっきな瞳を潤ませてる。
「電話の相手にヤキモチ妬いた」
俺はそう言いながら、翔くんをギュウッと抱きしめた。