第70章 クリームソーダ
…俺と翔くんがそんな出会いをしたのは1ヶ月半前。
今では学校の帰りに会ったり、家に遊びに行く仲になったんだ。
あの日。
帰宅した俺は夕食と風呂、学校の支度をすませ20時半頃、思いきって電話をしたんだ。
そこで、あの人の名前が櫻井翔といい、俺と同じ高校3年生なことを知った。
学校は離れてるけど、自宅は意外と近かった。
そして…
翌日はバイトが入ってなかったから、学校の帰りに会うことになったんだ。
待ち合わせは駅前のコーヒーショップ。
バイト先でもよかったんだけど…それはまた別の機会に行きたいって思ったから。
店の入り口で待つ制服姿の彼を見た時、すごくドキドキした。
その佇まいが絵になるくらい綺麗だったんだ。
「お待たせ」
「ううん、俺もいま来たとこ」
「中に…いや、ちょっと歩く?」
「うん、俺もそう思ってた」
俺たちは特に目的地もなく歩いて。
チラッと目が合っては、ふふって笑いあって。
そんな雰囲気がすごく心地よかったんだ。
「ねぇ、翔くん」
「なぁに?智くん」
「今日さ、俺のバイト先に行こうか」
「本当?お客さんとして智くんと一緒に行くの、初めてだね。智くんがバイトの時に、俺は何度か行ったことがあったけど」
「うん、なんかね行きたくなった」
「ふふっ。どうしちゃったの?」
「いいから…行こっか」
喫茶店まで歩いて5分。
俺はその道のりを…翔くんと一緒に歩くその道のりを…1歩1歩噛みしめるように歩いたんだ。