第70章 クリームソーダ
(Oサイド)
あのお客様が会計を済ませて店を出た。
マスターが俺を呼び、
「行っておいで。だけどすぐ戻ってくるんだよ」
そう言ってくれた。
「ありがとうございます」
俺は急いで店を出た。
「お客様!」
そう呼び掛けると振りかえってくれたんだ。
俺より少し背の高いその人は、頭を何度も下げる俺に
「それなら、また会ってください」
にっこりしながらそう言ったんだ。
「えっ…?」
そしてバッグからメモ帳とペンを取り出し、ササッと何やら書いたものを俺にくれた。
「それ、俺の携帯番号です」
「あ、はい…」
「電話…くださいね」
「はい。あ、俺の番号も…」
俺はその人がまだ手に持っていたペンとメモ帳を借りて、そこに自分の番号を書いた。
「ありがとうございます…お仕事頑張ってください。電話…待ってますね」
「ありがとうございます。じゃあまた…」
背を向けて数歩。
店のドアを開ける時に何気なく振りかえると、その人は手を振ってくれた。
トクン…
俺も手を振りかえして、店の中に戻った。