第68章 ボクと先生の事情
僕の体や心の傷。
怖い日々から救ってくれた大野先生。
見てくれてる人がいるってことが、どれほど嬉しかったか。
僕の中で、少しずつ違う想いももたらしていたけど。
まだシャツを着ていない僕は、下着と靴下姿のまま。
大野先生の腕の中は、陽だまりに包まれてるようで。
心も体もジワッと暖められていくんだ。
いつまでもこうしていたい。
気づけばもう、外は暗くなっていた。
「大野先生、もう大丈夫です。ありがとうございました」
僕はゆっくり先生と体を離していく。
「うわっ…」
「あっ」
少しずつ足を引いていた僕は、足元のズボンにひっかかってしまった。
バランスを崩した僕を大野先生が咄嗟に支えてくれようとしたけど…
僕はよろめきながら後ろにあるベッドに倒れ込んでしまったんだ。
大野先生とともに。
薄暗い保健室。
重なりあっている体。
僕の胸は心臓が飛び出るんじゃないかってくらいドキドキしている。
顔も体も心も熱いんだ。
「櫻井、大丈夫か?」
こんな時でも、大野先生は優しく声をかけてくれる。
「痛いです…先生。体も心も痛いです…」
僕は先生の首に腕を回して、そっと口づけをした。