第68章 ボクと先生の事情

「櫻井」

「はい」

「もう大丈夫ならさ、こうしてここに来なくても…」

「えっ…？」

「だってさ、ほら…もう確認する必要はないし…」

いつかはそう言われるんじゃないかって思ってた。

大野先生が言ってることは間違ってはいないのかもしれない。

だけど…

「大野先生…」

「ん…？」

「僕が来たら迷惑ですか？」

「迷惑なんて、そんなこと思ってないよ。ただ…」

「はい…」

「人にさ、肌を見せるのって…辛いだろなって」

「先生だから…大野先生だから…辛くなんてない」

「俺だから…？」

「先生がいてくれるだけですごく安心するんです。その声も表情も…」

俺は大野先生に抱きついた。

「さ、櫻井…？」

「それに…僕…先生のこと…」

「櫻井、それ以上は…ダメ」

「先生…」

「お前は…俺の可愛い生徒だから…」

先生の手が僕の頭を優しく撫でてくれる。

「大野先生…」

「ん…？」

「ここにはもう来ないから…最後に…ギュッてしてください」

「うん…いいよ…」

大野先生の手がゆっくり僕の背中に回ってくる。

僕の胸はドクンドクンと高鳴り、涙が出そうになった。