第68章 ボクと先生の事情
校舎がオレンジに染まる頃…
僕は保健室に向かうのが、ここ2ヶ月半ほどの日課になっている。
「大野先生…」
「おっ、櫻井。今日は少し遅かったな」
「今日は生徒会があったので…」
「ん、そっか」
先生は穏やかな表情でそう言いながら、後ろ手でドアのカギをかける。
その間に僕は奥にあるベッドに向かい、カーテンを閉めるんだ。
「櫻井、大丈夫か?」
「はい…開けてもいいですよ」
すると先生はゆっくりカーテンの中に入ってくる。
「んふふ。まだ途中じゃん」
「どうせ見せるなら、このタイミングでも同じだと…」
「そっか」
僕はシャツを脱ぎ、制服のズボンを下ろす。
所謂、下着と靴下姿になった。
その体を大野先生は心配そうな表情をしながら確認していく。
だけど先生は僕の体に手を触れることはしない。
「最近は…大丈夫なのか?」
「はい、大丈夫です」
「そっか。そうだな、キズやアザもなさそうだし」
そう言って、僕が脱いだシャツを手渡してくれるんだ。
3ヶ月くらい前、会社経営がうまくいかずにイライラしていた父。
その矛先が僕に向けられ、腕や背中を叩かれ、足を蹴られるようになった。
ムシムシと暑い時期になっても長袖のワイシャツ、体育でも半袖・ハーフパンツにならない僕。
その様子がどうもおかしいと気づいた大野先生が、校長に相談したらしく…
その時はじめて体を見せたんだ。
両親は一度呼び出され、注意を受けた。
幸い会社のほうは持ち直してきて、今はあたられることもなくなったけど。