第63章 キミって…
学校の最寄りのバス停からバスに乗って10分。
降りてから歩いて5分。
見慣れない町並みにソワソワした。
大野くんが立ち止まったのは、真新しい戸建ての家が建ち並ぶ奥にある、瓦の屋根と広い庭が印象的な家の前。
趣があっていいなって思った。
「ここさ、じいちゃんちなんだ。」
隣で大野くんがクスッと笑いながら、玄関のほうに歩き出した。
俺もその後に続いた。
中は一部リフォームされていて、防音仕様になっているのだろう。
フローリングの広めのその部屋には、カラオケセットやギターなどが置かれていた。
「ここ、じいちゃんの趣味の部屋。」
「へぇ…。あれ?おじいさんは?」
さっきから一度も姿を見ていないから気になった。
「じいちゃんは今ね、故郷にいるよ。同窓会に行ったらさ、親友と離れがたくなったみたい。暫く向こうにいるんだって。」
「ふふっ。その親友さんとはよっぽど仲良しさんなんだね。」
「うん。いいヤツなんだよってさ、よく話を聞かされてたし。」
「うん。」
「でね、じいちゃんがいない間、換気したり庭の手入れする代わりにさ、あの部屋を自由に使っていいよって言われてるんだ。」
ふと外に目を向けると、たしかに庭がよく手入れされている。
大野くん、草むしり上手だったもんな。
草をかき分けて茎を掴んで…再びあの光景が浮かんできてしまい、体がブルッとした。
「櫻井くん、大丈夫?」
「あ、うん。大丈夫だから。」
「そう?それならいいけど…。」
首を傾げながら俺を見る大野くんにドキンとする。
「あっ。ダ、ダンスはさ、あの部屋で見せてくれるの?」
「うん、そう。」
大野くんがストレッチを始めた。
「櫻井くんもやろうよ。」
そう言われて、なぜか俺も一緒にストレッチをしている。
時々、俺の手や足の角度を直す大野くん。
体に触れられる度に、俺はドギマギしてるけど…大野くんはどうなんだろう。