第61章 夏の終わりに。
大野先輩の綺麗な指が、俺の髪の毛を優しく撫でる。
「諦めなくて良かったぁ。」
本当に嬉しそうに言うから、俺もちゃんと伝えたいって思った。
「俺は…先輩が俺と同じ男の人だからっていうのがどこかで引っ掛かるものがあって。イヤではないけどどうしたらいいのかわからなかったっていうか…。」
「う、ん。」
「だけど…俺も先輩と花火を一緒に見たいって思ったし、浴衣を着たくなるくらいワクワクしたりして…。」
「うん…。」
「母さんに着付けまで教えてもらって。そんな気合い入ってる自分にびっくりしたけど、大野先輩が好きって。大好きなんだって…そうわかって。」
「俺はね、一目惚れしたんだよね。学校では1年しか一緒に過ごせないからさ、ちょっと焦っちゃったんだよ。しょーくんモテるから。」
「あはっ。焦ってたんですか。」
「うん。しつこいくらいに、相手に声をかけるなんてさ。自分でもこんな気持ち初めてで。もうびっくり。」
「先輩も同じだったんですね。」
「そうだよ。恋して新たな自分を発見。」
「はい、俺もです。」
「そんな自分もキライじゃないし…。」
大野先輩が俺の額にキスをした。
「これからもよろしくね、しょーくん。」
「はい、よろしくお願いします…智、くん。」
「えっ…。」
先輩…智くんがガバッと起き上がり、目を丸くしている。
「二人でいる時は…そう呼びたいなって。」
「うん。いい、いい。ありがとう。」
「は、い…。」
微笑む智くんの綺麗な表情とネックレスが揺れる首もと。
それがとても色っぽくて。
そして、見下ろされているこの体勢にもドキドキし始めた。