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キミとボク【気象系BL】

第61章 夏の終わりに。



「本当に綺麗ですね、夕陽。」

「しょーくん…。」

「もうすぐ始まりますね、花火。ここから見えるんですか?」

俺は大野先輩の視線から逃れるように空を見上げた。

オレンジ色からあっという間に暗くなった空。

「うん。立ってると見えないのにさ。不思議とね、座ったり寝そべると見えるんだ。」

「そうなんですね。」

ジャリジャリ音がするほうを見ると、大野先輩が歩き始めていた。

俺もその後をついていく。

この辺りだなぁなんて言いながら、先輩は歩みを止めて土手に腰を下ろそうとした。

「あっ、ちょっと待ってください。」

俺は手提げからレジャーシートを取り出して広げた。

「河川敷だったから一応持ってきてみたんです。一緒に座ろうかなって。」

「しょーくんは気が利くね。」

敷くのを手伝ってくれた先輩がニコッとしてくれて、ちょっとホッとした。



ヒュ〜ッ…パァーンッ…
パラパラパラパラパラ…

花火は向かいの木々の間から小さくだけど見えた。

敢えてここから見ようと思う人は、他にはいないかもしれない。

だけど、俺は惹き込まれたんだ。

木のシルエットに様々な色の花が咲いては散り、咲いては散りしているような…。

その儚さに、目の奥がジワッとした。

「綺麗でしょ。」

「はい、本当に綺麗…。」

横を向くと、俺を見つめる大野先輩の顔が思いのほか近くにあってビクッとした。

胸がドキドキそわそわして顔を反らそうとしたけど、今度はできなかった。

体をふわっと包まれたから…。



心のどこかで期待していたのかもしれない。

先輩に抱きしめられて、素直に嬉しいと思ったんだ。

俺も先輩の背中に腕を回した。

「好きです。大野先輩が好きです。」

自然と…口にしていた。




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