第58章 麗しきかな
「先生のこと…ギュッてしたいです。」
俺は先生の撫でた肩に置いていた手を、ゆっくり背中に回した。
自然と近づく距離。
密着する身体。
先生の手は俺の背中には回らずに、腕の肘あたりを掴んでいる。
それがぎこちなくてもどかしくて、もっと何かしたくなる気持ちになった。
キス…したい。
俺が顔を近づけると、先生の顔が逃げていく。
「ここでは…だめ、だって…。」
囁くようにして言う声が、色っぽくて堪らない。
近づいては逃げて、追いかけて。
何度か繰り返すうちに俺たちの体勢はどんどん低くなっていった。
ペタンと座り込んだ先生に跨がる俺。
暗がりの中、胸がドキドキする。
「先生は、俺とキスするのイヤなの?」
「違っ。そうじゃなくて…ここ、学校…。」
先生がこだわるのはやっぱりそこ。
だけどここまできたら俺も譲れないんだ。
「イヤじゃないなら、キスしよ…。」
俺は先生の頬と後頭部に手をあてた。
顔を近づけていくと、先生自らもゆっくり俺のほうに近づいてくるのを感じた。
ちゅっ。
重なった唇。
それはちょっと震えていて。
キュン…としたんだ。
唇を離すと
「もうっ…。」
先生が俺の胸を軽く叩いた。
これって、何気にイチャイチャなんじゃないか…。
ズクン…
こうなると、俺の中心は益々反応するわけで。
「大野くん、もしかして…。」
とうとう、先生にも気づかれたみたいだ。