第10章 恋ごころ
「やばっ、授業が始まる。」
「急ぎましょう。」
僕たちは図書室を出て、教室に向かい歩き出した。
いま、大野先輩の隣を歩いてるんだ…。
夢?これは夢なのか?
僕はほっぺたをつねってみた。
「いてっ。」
「ふふっ、何やってんの?」
「これは夢なのかなって。」
「櫻井くんって見ていてあきないね。」
「えっ…?」
「ふふ。じゃあまたね。」
大野先輩は手を振って去っていった。
教室に着いてからも、僕はふわふわした気持ちでいた。
『櫻井翔くん』
初めて名前を呼ばれた時の、大野先輩の澄んだ声が耳から離れない。
そういえば図書室に何しに来たのかな…。
本、借りなくて良かったのかな…。
そんなことを思っていた。