第56章 ボクたちのカタチ
(Sサイド)
俺…何もわかってなかった。
智くんが、俺とキスしたいってずっと思っていてくれてたなんて。
あの日…智くんに合鍵をもらった日…俺が泣いてしまって。
それを気遣って、その後は我慢してくれてたなんて。
本当に優しいんだから。
言ってくれないとわからないけどね。
でも…
「んふふふふ…。」
「翔?」
「良かった…。智くんに嫌われてたんじゃなかったんだ。」
「当たり前だろ。今日もさ、せっかくの休みだから、翔には好きなことをしてもらいたかったんだ。」
「そうだったの…?俺は…智くんと休みが重なったからさ、一緒に過ごせるといいなって。」
「そっか。翔は翔で考えてたのか。ごめんな。」
「ううん、大丈夫。嬉しい。」
「俺にはこれからもずっと翔だけだから。自信持てよ。」
胸がじわっと熱くなってきて、俺は智くんを抱きしめている手に更に力を込めた。
「うん、うん、うん。俺にも智くんだけだから。」
「ありがとう。」
同じように、智くんも俺を更にギュッとしてくれた。
「翔…。」
智くんが優しく俺を呼ぶ。
「翔…好き。」
あっ…
ゆっくり身体を離して智くんを見ると、ニヤッとしながら俺を見ていた。