第56章 ボクたちのカタチ
(Oサイド)
1日1回は“好き”って言って欲しいなんて。
それなら俺も…。
「俺からのお願いもあるんだけど。」
「うん。」
「俺も1日1回は“好き”って言って欲しい。だから、お互いに“好き”って言うのと言われるのとでさ。」
「うん。言って…言われて…だね。」
「そう。それで…俺はね、1日1回は“キス”したい。それで、“好き”って言われた時は、返事の代わりに相手にキスをする。」
翔はキョトンとしている。
「翔は、イヤなのか?」
「ううん、イヤじゃない。」
翔は慌てたように首を横にブンブン振っている。
「んふふ。じゃあ決まりかな。」
「うん…。でもそれってさ、ほっぺたとか、おでこでもいいの?」
「それはダメ…。唇onlyで。」
「唇onlyって…。恥ずかしいよ…。」
翔の頬は真っ赤だ。
「俺たちがさ。最後にキス…唇を重ねたの、いつだったか。翔は覚えてる?」
「うん。忘れるはずがないよ…。」
「正直に言うとさ。俺…ずっとキスしたかった。だけどまた翔を泣かせたらどうしようって思ってさ。あれ以来キスできなかった。」
「えっ、智くん…俺のことを考えて…だったの?」
「うん。まぁね。言われたほうがキスをするっていうのも便乗した感じなんだけどさ。」
「智くん…ありがとう。」
俺は翔にギュッと抱きしめられた。
だから俺も、翔をギュッと抱きしめた。
はぁ…
翔の広い背中に厚い胸板。
久しぶりのこの感触がたまらない。