第56章 ボクたちのカタチ
(Sサイド)
智くんは“好き”って言ってくれただけじゃなくて、おでこにキスまでしてくれた。
ビックリして咄嗟に智くんの服を掴んでしまったけど…
よく考えてみたら、智くんに抱きつくチャンスだったかもしれない。
智くんとは普段、こんな雰囲気にならないから…どうしたらいいのかわからないのが本音なんだ。
俺のおでこから、智くんの唇が離れていく。
だけど頬に触れてる手はそのままだから、智くんの綺麗な顔が間近にあって。
心臓がドッキンドッキンって音を立てている。
「ありがとう。智くん。好きって…言ってくれて。」
ありったけの想いを込めて智くんに伝えた。
智くんは、自分はここぞという時にしか言わないつもりだけど、俺が望むなら何度でも言ってあげると言ってくれた。
そして…俺はどうして欲しいのかを訊ねてくれた。
俺が考えている間、おでことおでこをくっつけてくれていて、暖かさに何だか安心した。
「智くん、あのね。」
「ん?」
「俺は…1日1回は“好き”って言って欲しいな。起きた時でも寝る前でも、もちろん他の時でもいいから。ダメ…かな。」
智くんはおでこを離して、
「んふふ。いいよ。」
ふにゃんと微笑んでくれた。
ホッとしていると、
「翔。」
って名前を呼ばれた。
智くんの表情がさっきと違い、真剣な眼差しで俺を見ている。
「智くん…?」
「翔。俺からのお願いもあるんだけど。」