第56章 ボクたちのカタチ
(Sサイド)
智くんが…話をしようって。
俺たちがずっと一緒にいるための…
話をしようって…言ってくれた。
「俺…これからも智くんといてもいいの?」
恐る恐る聞くと、智くんは抱きしめていた身体を離し、俺の肩に手を乗せて顔をじぃ…っと見た。
何を言われるんだろうとビクッとしてしまう。
「いいも悪いも…俺、おま…翔と一緒にいたくないとか思ったことないし。」
「ホント…?」
「ホントだって。そもそもさ、何でそう思うんだよ。」
「だって、ただの同居人みたいに思ってるのかなって。」
「同居人って…。」
「俺に関心がないのかなって。」
「そんなことねぇよ?」
「邪魔なのかなって。」
「はぁ…もう。逆、逆。邪魔どころか、いると安心するんだよ。」
「安心…?」
「何て言うんだっけ…。うーんと…。あっ、オアシスだよ。心のオアシス。」
「俺が?」
「そう。いてくれるだけで幸せなんだよ。」
「う、そ…。」
「嘘ついてどうするんだよ。まだ不安か?信じられないか?」
「ううん…そんなことない… 。ちょっとビックリしたっていうか…嬉しいっていうか…。」
オアシスとか、いてくれるだけで幸せとか…
まさかそんな風に思ってくれてたなんて…。
だけど…
「智くん…。」
「ん?」
「安心するとか…オアシスとか…それはもちろん嬉しいよ。でもね…。」
「何だよ、はっきり言っていいから。」
「うん…。俺が欲しいのは、もっと違う言葉なんだ…。」
ごめんね、智くん。
素敵な言葉をもらったのに…
俺はやっぱり、自分が一番欲しい言葉をね、
智くんに言ってもらいたいんだ。