第56章 ボクたちのカタチ
(Oサイド)
思っていることを口にし始めた翔が、途中から涙を流している。
一緒に住んでていいのか、自分は俺の何なのかと…。
不安とか寂しいとか…俺はそういうつもりはなかったけど、そんな思いを翔に抱かせていたなんて。
俺は、思わず翔を抱きしめた。
翔とは仕事で知り合い、プライベートでも食事やドライブに行くようになっていった。
俺が仕事相手と仕事以外で関わりを持つなんて、今までなかったことで。
翔の猛アタックに押されたのもあるけど、嫌だとは思わなかった。
仕事もしやすかったし、人として尊敬ができて好感がもてる人だったってのもある。
翔はルックスも性格も良くて仕事もできるから相手には困らないはずなのに…俺がいいって…俺のことが好きだって言うんだ。
嘘だろ?って思った。
男の俺を?って思った。
それに、普段の俺は口数が少ないし、ぶっきらぼう。
そんな俺を知っても、翔は離れていかなかった。
翔は一緒にいて居心地がいい。
次第に男友達とは違う感情を、俺も翔に抱き始めた。
合鍵を渡した時、嬉しいって泣く翔が愛しくて…キス…した。
俺たちの初めてのキス。
そしたら更に泣かれて。
ピュアすぎて…正直なところ、手…出しにくくなったんだ。
一緒に住むようになって、翔が同じ空間にいるだけで幸せを感じていた。
それに個人の時間も大切にしたいし、翔にも大切にしてもらいたかった。
もしかしたら、そんなところの想いの違いが俺たちにはあるのかもしれない。
「ちゃんと話をしよう?これからの二人…俺と翔がさ、ずっと一緒にいるために。な?」