第56章 ボクたちのカタチ
(Sサイド)
てっきり出掛けてしまうと思ってたのに、
「ちょっとソファーに行こうか。」
そう言って智くんは俺の手を取った。
智くんに触れられているところに神経が集中して熱い。
俺は智くんに手を引かれて、ソファーに座らせられた。
智くんは掴んだままだった俺の手を、両手で優しく包んでくれた。
こんなの初めてでドキドキする。
それに、俺のおかしな様子が気になって出掛けるどころじゃない、俺のほうが優先…って言ってくれて。
すごく嬉しく思ったんだ。
「で?」
「あ、うん…。」
「思ってること。」
「言っても…いいの?」
「溜め込んでても、お前にしかわからないだろ。」
ぶっきらぼうでも、眼差しは優しくて。
出掛けずにこうして居てくれてるから…
思ってること、話したいなって思ったんだ。
「智くん。」
「ん?」
「俺…一緒に住んでていいのかなって。智くんにとって俺って何なのかなって。俺は智くんのことが大好きだし、いつまでも一緒にいたいけど…。智くんの気持ちがよくわからなくて。不安で寂しくな、、…。」
色々言葉にしていくうちに、涙がポロポロこぼれてきた。
俺の話を聞いていた智くんの表情が段々歪み始めたと思ったら…ギュウッて強く抱きしめられた。