第56章 ボクたちのカタチ
朝ごはん…どうしようかな。
智くんが食べるかどうかわからないけど、クロワッサンとハムとチーズ、トマトなどをテーブルに用意した。
コーヒーカップを準備していると、トテトテと歩いて来る足音が聞こえた。
「智くん、おはよう。」
「ん。」
ピョンと跳ねた寝癖が可愛い。
思わず触りたい衝動にかられたけど…グッと我慢した。
智くんが俺を見ることなく、ソファーに行ってしまったから。
俺は気を取り直して、二人分のコーヒーをいれた。
そして“コトン”とわざと音を立ててカップをテーブルに置いた。
智くんに気づいて欲しかったから、こっちを向いた智くんと目が合って嬉しかった。
「飲もう?」
「ん。」
テーブルには智くんと向かい合わせに座った。
コーヒーを啜る智くんを、俺はいつの間にかじっと見ていたのだろう。
「お前、見すぎ。」
「ごめん。つい…。」
「ま、いいよ。」
智くんは笑うわけでも怒るわけでもない表情をしている。
きっといつものことだからって呆れられてるんだろうな…。
「智くん、今日は…。」
「ん~っ。ちょっと出てくる。」
「そっか…。」
残念だな…。
俺の声色に気を止める素振りもなく、智くんはコーヒーを飲んだだけで立ち上がり、部屋に戻ってしまった。
一緒に住んでるのに…寂しくなる。