• テキストサイズ

キミとボク【気象系BL】

第9章 色を探して



「どうして智くんがこの絵を…?」

「わりぃ。たまたま探し物してたら見つけて。」

「………。」

「いい絵だよ。おいら好きだな。」

「…この絵、が…?」

「そう。特にここ。」

智くんは、薄茶色にしおれたつつじを指した。

俺はびっくりして、暫く言葉が出なかった。

「これ見てね、翔くんは命の儚さとか…生命を大切にしてるんだなって思ったんだ。」

「…俺ね、これ描いた時ね…ありがとうの気持ちを込めたの。」

「うん。」

「それでね…。」

言葉に詰まってしまった俺を、智くんは穏やかな表情でじっと待っていてくれた。

俺はふぅ~っと深呼吸した。

「茶色い花なんてありません、って言われてね…悲しくなったの。悔しくなったの。」

「うん。」

「ここに来たくても思い出しちゃってね、来れなくなっちゃったの。」

「そうだったんだね。」

「でもね、智くんがいい絵って言ってくれたから。1人でもそう思ってくれる人がいて…それだけで十分。ありがとう。」

「それなら良かった。」

「あとね、智くんがいる中学校がよく見える場所だったから大好きだったの。」

「校舎を見るのが好きだったの?」

智くんは口を尖らせながら言った。

「違うよ。校舎っていうか、その中のどこかに智くんがいるんだって想いを馳せてたの。智くんのことを考えてたの。」

「んふふ。」

「俺、変なこと言った?」

「違うの。同じだなって思ったの。」

そう言って、智くんはスケッチブックの中の絵を開いて見せてくれた。




/ 1027ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp