第9章 色を探して
「智くん、ここ、行くの…?」
俺は足がすくんでしまい、手汗もひいていた。
「おいらがいるから。」
智くんがふにゃんと微笑んだ。
俺の大好きな智くんの表情を見て、智くんとだったら大丈夫な気がしてきた。
それを感じ取ってくれたのか、智くんは手をそっと引いてくれて…俺は一歩を踏み出すことができた。
入り口を入ると、広場にたどり着くまでしばらく緩い坂道が続く。
その緩い坂道を、智くんは俺に合わせてゆっくり歩いてくれた。
それがすごく嬉しかった。
坂を上りきると、何だか涙が出てきた。
だって、また来ることができたから。
智くんは持ってきていたスケッチブックの中から1枚取り出し、ウロウロし始めた。
俺は智くんの行き先を追いつつ、鼓動が高鳴ってきていた。
「あった!ここかぁ。」
そこには俺が大好きだった風景があった。
智くんが通っていた中学校の校舎が見える場所。
「しょうくん、これ。」
智くんは手にしていた1枚を俺に差し出した。
画用紙の回りが少し黄色っぽく変色してるけど…それは5年生の時に俺が描いたあの絵だった。