第9章 色を探して
そこには、俺たちが通っていた小学校の校舎が描いてあった。
「美術部の活動でね、ここに来たの。中学校に入ってすぐだったかな。それでね、描いたの。しょうくんがここにいるんだなぁって。」
「それって…。」
「うん、そう。しょうくんと同じ気持ち。」
「なんか嬉しい。」
「でしょ。しょうくんの絵を見つけた時ね、びっくりしたもん。」
「うん…。」
「でね、今はまだおいらたち高校生だし、兄弟でもあるし…。今はね、兄弟だから一緒にいられるんだって思うようにしてるけどね、もっと大人になったら…その時は、ってね。ちゃんと考えてるから。」
「うん。」
「それでも良ければ、おいら…じゃなくて、俺を信じてついてきてくれるかな。」
「うん、うん、うん。ついてく。ついてくから。信じてるから。離さないでね。」
「離してたまるか!」
校舎とつつじと空。
大好きで大切だった風景が、二人の思い出の場所に色づいた。
俺たち兄弟の想いがつまった絵。
兄の智くんの絵にも、薄茶色のしおれたつつじが描いてあることに気づくのは、もう少し先のこと。
「しょうくん、これからはもうちょっとだけ濃厚なちゅーしてみる?」
「ば…ばっかじゃないの!…ぃぃょ…。」
「やった!」
END