第52章 近くて遠くて
智くんとの初めてのキス。
それはとても優しくて柔らかくて、それでいて胸がカァッと熱くなって。
触れたくて堪らなくて、こっそり指で触れた時のことを思い出したら、切なくもなってきたんだ。
智くんの唇の動き。
俺の唇の動き。
お互いの舌の動き。
お互いの息づかい。
今…智くんとキスしてるんだって実感する。
「んっ…しょ、く…。」
「さと…。」
ちゅっ。
リップ音をたて、名残惜しく感じながら唇を離した。
「んふふ。」
「ふふっ。」
嬉しいのと恥ずかしいのとで、何だか笑ってしまう。
「とうとうしちゃったね、キス。」
「うん、嬉しい…。」
そう言った俺を見る智くんは男っぽくもあり艷めいていて。
初めて見た智くんの妖艶な表情にドキドキした。
顔は火照るし、身体は熱いし、中心は…反応してる。
「翔くん。」
「…ん?」
「好き。」
「俺も、好き。」
俺たちは再び唇を重ねた。
ちゅっ。ちゅっ。と啄むようなキス。
唇を甘噛みするようなキス。
濃厚な舌を絡ませるキス。
智くんと目が合ったり、頭を撫でられたり手をキュッと握られると何だか照れてしまうけど、胸がジーンとする。
今まで近くにいても、触れられないでいたから…
そのどれもが幸せだな…って思った。