第9章 色を探して
(Oサイド)
しょうくんは頭が良かったから、受験して私立の中学校に入学した。高校はエスカレーター式だった。
多分だけど、この頃から「お兄ちゃん」ではなく「智くん」と呼ばれるようになったと思う。
おいらはしょうくんの想いに気づきながらも、変わらない日々を送るようにしていた。
しょうくんが高校に入学した日…お祝いに何が欲しいかを聞いてみた。
「キス…。他には望まないから…。」
しょうくんは頬を赤らめながら、絞るような声で言った。
真面目なしょうくんだから血の繋がりはなくても、兄弟である事実にどこかで線引きをしているんだろうとは感じていた。
だから、キスが欲しいって言ったのには相当の勇気がいったんじゃないかな。
おいらよりも勇気があるよ、しょうくん。
おいらが顔を近づけると、しょうくんは耳まで赤くして少し震えていた。
唇に触れるだけのキス。
きょとんとするしょうくんが可愛いかった。
その日から、“おはよう”と“おやすみ”の時は“ちゅー”をしてもいいって、おいらが決めた。
しょうくんは照れながらもコクっと頷いた。
先に眠ってしまったり朝活もあったりして、ちゅーができない日もあるけど、ちょっと…いや、かなり残念だったりする。
…おいらもそろそろ頑張ってみるかな。