第52章 近くて遠くて
翌日、智くんの部屋で数学の勉強をした。
元々覚えはいいのに…やる気によるのかな。
「ちゃんとできるじゃん。」
「翔くんの教え方がいいからだよ。」
「誉められても何もでないよ。」
「残念だなぁ。」
ぷぅって頬を膨らませなくても…。
「それにさ、教えてるのは俺なんだから、お礼をもらえるなら俺のほうじゃない?」
「んふふ。それはそうだね。」
そう言いながら、智くんがゴロンと寝転がった。
「うん、そうだよ。」
俺もその場に寝転がる。
智くんの部屋で勉強していると、最後のほうは大抵いつもこの流れになるんだ。
勉強して頭を使うと、智くんはすぐ眠くなるらしい。
「智くん、もしかしてお昼寝タイムですか?」
「うん。翔くんもさ、おひるねタイムしよ?」
舌ったらずな話し方…。
「あはっ。もう半分寝てるっぽいじゃん。」
「うん、もうねるぅ。」
「おやすみ、智くん。」
「おやすみ…しょ、く…。」
「寝るの、早っ…。」
はぁ…。
身体を智くんのほうに向けてみる。
今日はちょっと遠いな。
俺は音をなるべくたてないようにして、智くんと腕1本分くらいの距離まで近づいた。
スースーと寝息をたてている智くん。
俺と智くんは友達だけど…
男同士だけど…
無防備すぎるんだよ。
だったらさ…
少しなら…
触れてもいいかな…。