第50章 かき氷のように
「美味しかったね。」
お互いに、かき氷を食べ終えた。
翔からは甘い香りが漂っている。
俺はそれに引き寄せられるように
「熱…どうかな…。」
翔のおでこに、自分のおでこをくっつけた。
一瞬ビクッとしてたけど、翔はそのままでいてくれた。
顔が近づいたことで、鼻腔に感じる甘い香りが強まる。
「智くん…?」
翔の甘い香りと視界に入る赤いぷっくりした唇。
どうして兄弟なんだろう…
兄弟じゃなかったら…
胸が苦しくなって、思わず翔を抱きしめた。
「さと…く…?」
まだ高めの翔の体温がじわじわ伝わってくる。
鼓動が高鳴ってきて、体温とは真逆の冷たい唇に口づけをした。
17年間一緒に過ごしてきて、初めて触れた翔の唇…その柔らかさ…。
「…さ、とっ…。」
翔の声で我にかえった。
「しょ…ごめっ…。」
唇を離して翔を見ると、頬を紅潮させて、おっきな目を潤ませている。
「ちょっと頭を冷やしてくる。」
俺はそう言い残して、洗面所に向かった。
洗面台で、顔を水でバシャバシャ洗う。
小さい頃から、毎朝俺が水で顔を洗うのも、今みたいに気持ちを抑える為でもあって…。
…今頃、翔は何を思っているのだろうか。
翔の部屋には行きづらい。
一旦、自分の部屋に戻ろう。
そんなことを思いながら、洗面所を出ると…
翔がすぐ目の前に立っていたんだ。