第50章 かき氷のように
住んでるアパートからお祭り会場までは、歩いて15分。
翔と一緒だったらゆっくり歩いたであろう道を、俺は足早に歩いた。
知人に会うと面倒だし、列ができてしまう前に買って帰ろう。
露店は毎年同じ場所に店を構えているから、何となく記憶にはある。
翔の好きなタコ焼き、ホルモン焼き、それから水飴。水飴は店員さんとのジャンケンで勝ったから3本ゲットした。
最後にかき氷を買って、急いで翔の待つアパートに向かった。
翔の部屋のドアは開いていて、翔はベッドではなくローテーブルのとこにいた。
「ただいまぁ。」
「お帰り、智くん。…ってか、すごくない?」
ニコニコしながら袋の中をのぞく翔の表情は、小さい頃と変わらなくて。
テーブルに置くのを待てないとこも、可愛すぎるんだよ。
「水飴さ、ジャンケンで勝ったんだよ。」
「さすが、智くん。」
パチパチパチパチッて…
「んふ。拍手ありがと。それを外でされたら、ちょっと恥ずかしいけどね。」
「あっ、そっか。あはは。つい拍手しちゃった。」
…絶対やりそうだな。
翔のテンションが何となく高いのは、お祭りがもたらす効果なのもあるとは思うけど、俺に気遣ってなんだろうな。
体調が悪いんだからさ、そんな無理はしなくてもいいんだけど…それが翔なんだよな。
「どれから食べる?」
「かき氷にする。」
「そうだな。溶けてきてるからね。」
「うん。」
「はい、どうぞ。」
「ありがとう、智くん。」