第9章 色を探して
「しょうくん、今日は予定あるの?」
「ないけど…どうして?。」
「散歩に行こうか。」
「どこに?」
「うーん…おいらが好きな場所、かな?」
「ふはは、何で疑問系なの?」
「んふふ。」
上手くはぐらかされた気もするけど、この人のそんなところも好きなんだ。
いつもは財布と鍵をズボンの後ろポケットに入れるかウエストポーチの智くん。
今日は大きめのカバンを用意してるから不思議に思ったけど、スケッチブックがチラッと見えたから絵でも描くんだろうとそれほど気にはしなかった。
智くんとこうして二人で歩くのは久しぶりで、ドキドキが止まらなかった。
そんな俺の気持ちをよそに
「デートしてるみたいだね、ふふっ。」
…なんて言ってるし。
智くんは…ドキドキしてないのかな…。
俺は緊張とドキドキで手汗が半端ないのに。
やっぱり智くんにとって俺は、弟でしかなのかな…。
いつもと変わらない智くんに、ちょっと落ち込む。
自然と俯いて歩いていたようで、どこに向かっているのか気づかずにいた。
「着いたよ~。」
智くんの声で我にかえり、その場所に唖然とした。
そこは…
あの日以来、俺が足を運べなくなった城址公園だったんだ。