第9章 色を探して
お兄ちゃん…智くんが中学生になると、家の中で顔を会わせることも少なくなっていった。
中学校は少し遠くて朝は俺より早く出るし、帰りは部活があって夜の7時くらいに帰ってくることが多かった。
勉強も大変そうだったし、学校がお休みの日でも部活があれば行ってしまう。
だから、ご飯と歯磨きの時くらいしか一緒にいられなかった。
「しょうくんにも歯みがき粉つけてあげる~。」
「ありがとう…って、つけすぎだから!」
ほんの些細なやり取りだけど、隣に並んで同じことをしているだけで幸せな時間だった。
そんな時、友達に誘われて遊びに行ったのが小学校の近くにある城址公園。
俺が今まで一度も行ったことがなかった場所。
それまでは家で絵を描く智くんを見ていたくて、いや、智くんの側にいたくて外で遊ぶことはあまりなかったから。
城址公園では広場で鬼ごっこをしたり、アスレチックで遊んだりして楽しかった。
何よりも、中学校の校舎がよく見えるのを知って、すごくすごく嬉しかった。
友達と遊べない時でも1人で城址公園に行って、中学校の校舎を眺めていた。
智くんがあそこにいる。
それだけで胸が高鳴った。
双眼鏡を持って行ってみようかと考えたこともあったけど…それはやめることにした。
そこにいるだけで
智くんを感じられて
幸せな気持ちになれる
大好きで大切な場所だった。