第49章 いつもの日常の中で
「ただいま。」
何だか重たい気持ちのまま帰宅した。
ちゅう…拒んじゃったし…。
それに、間近で見た智くんの顔にドキドキがずっと止まらないでいる。
意識しすぎだな…俺。
家の中が妙にシーンとしていて、テーブルの上にはメモと5千円札が置いてあった。
そうだった、父さんと母さんは今夜は同窓会があって、ついでに週末は二人で旅行だったなぁ。
メモには、智くんの両親もうちの親と同じ学校の同級生で同窓会に出席することと、クリームシチューを智くんのお母さんが作ってくれたので智くんを呼んで一緒に食べて…ってことが書いてあった。
智くんかぁ…。
思い浮かべるだけで心臓がバクバクする。
呼ばないとダメだよね、シチューあるし…。
とりあえず、着替えよう。
俺は制服から部屋着に着替えた。
ポスン…
暫くベッドに横になってみたけど、それでも落ち着かない。
シャワーを浴びたらスッキリするかな…。
俺は風呂場に向かい、熱めのシャワーを頭から浴びた。
浴後、髪を乾かしてからスマホとにらめっこ。
あっという間に5分が経過。
ふぅ…。
俺は少し震えている指先で、智くんの番号をタップした。
『はい、もしもし…。』
電話の向こうから聞こえてくる智くんの声。
いつもより低めで落ち着いているその声に…
ドクン…ドクン…
やっぱり胸がザワザワする。
『しょーくん?』
「あ、智くん?えっと…そうそう。あのさ。シチューあるから。シチュー。シチューだよ。そう、シチュー。」
『んふ。シチュー?』
「うん、智くんのお母さんが作ってくれたみたいでさ。智くんと一緒にって…。」
『いいの?行っても。』
「うん。もちろん。温めて待ってるから。」
『わかった。じゃあ向かうね。』
「うん。待ってる。」
プツッ…プーップーッ…
ふぅ…。
緊張したぁ。
電話でさえこんなになってるのに、どうしよう。
だけど、不思議なんだ。
智くんと電話で話をする前と比べると…
智くんと会えるから嬉しい
…っていう気持ちのほうが大きいことに、俺は気づいた。